22   肝臓は様々な化学反応の場なのだ


1MA 11/2(月)予定 1MB 11/4(水)予定

 

授業の目標

肝臓につながる血管を流れる血液中の成分を肝臓の機能を踏まえて説明できる。 

 

重要な語句(P.はベストフィット生物基礎)

肝門脈(P.117)

…(消化管)を流れた血液が集まって(肝臓)へと注ぎ込む部分の血管。

グリコーゲン(P.117)

…(グルコース)が多数結合してできた多糖類。主に動物細胞に含まれる (エネルギー)貯蔵物質である。

 

授業の内容

肝臓は人体最大の臓器である。

…3本の血管が関わっている。

肝動脈…心臓(左心室)から肝臓に入ってくる血管。

肝門脈…消化管(小腸など)から肝臓に入ってくる血管。

→肝門脈には消化管で吸収された栄養素(グルコース、アミノ酸など)が多く含まれている。

→肝臓には様々な物質が入り込むため、それらを用いて様々な化学反応が起こっている。

肝静脈…肝臓から心臓(右心房)へ向かう血管。

◎肝臓で起こる化学反応には次のようなものがある。

グルコースグリコーゲンに変化する。(その逆も行う)

→グリコーゲンを合成し、貯蔵しておく。

→エネルギーが必要な時は、グリコーゲンを分解してグルコースにし、血液を通じて、全身の細胞に送る。

②血しょう中のタンパク質をつくる。

③有害なアンモニアから害の少ない尿素をつくる。

④アルコールなどの有毒な物質を無毒化する(解毒作用)。

胆汁をつくる(つくった胆汁は胆のうに蓄積される)。

 

⑥化学反応により、を生成する(体温維持に用いられる)。

 


Back Side Story Vol.22

世界三大珍味に絡むガチョウの悲劇について語る

 肝臓は再生能力が高いことで有名だ。肝臓移植のドナー(臓器提供者)は肝臓の一部を切除して、他人に移植を行うが、残された肝臓は1ヵ月もすれば元の大きさに戻ることが知られる。その分、病気などにかかっていても、気付きにくく、気付いた時には既に手遅れ、ということもある。これが沈黙の臓器と呼ばれる理由である。


 肝臓は英語でLiverといい、日本でもよく食べられている。2012年に食中毒で大勢の人が亡くなったのを受けて、レバ刺し(生でレバー=肝臓を食べる)は食べられなくなってしまった。加熱すれば問題はないし、鉄分が多く含まれるなど、栄養価は高い。したがって、レバ刺しがダメになった後もレバニラ炒めなど、様々な料理に用いられている。


 そんな肝臓を伝統的に食べているのがフランスだ。もっとも、そこで使われるのはウシやブタのものではなく、ガチョウやカモの肝臓だ。フランス料理が誇る世界三大珍味のひとつ、フォアグラだ。フォアグラはフランス語で「脂肪肝」という意味になる。普段はなかなかお目にかかれないが、結婚式なんかの晴れの舞台では、高級食材として出てくることが多い。食べてみると分かるが、我々が日常的に食べるレバーに比べて、やはり脂身が多い。ヒトの場合は、酒の飲み過ぎで脂肪肝になることがある。ガチョウにしても、フォアグラというのはあまり健康な肝臓ではないのだ。


 このフォアグラづくりが、動物虐待に当たるということで、近年、注目を集めている。どこが動物虐待に当たるのか?実はその模様を描いたドキュメンタリー(?)がYouTube上にある。URLを載せておくので、興味のある人は観てみてほしい。ただし、やや残虐な内容を含むので、そういうのがイヤな人は観ない方がいい。(http://www.youtube.com/watch?v=DKeve2ye790


 フォアグラを愛する人達は脂肪たっぷりの肝臓になることを求めている。脂肪たっぷりの肝臓をつくるには、たくさんの餌を食べさせる必要がある。問題なのはその食べさせ方だ。脂肪たっぷりにするために、強制的に餌を食べさせる(これをガヴァージュという)のだ。ガチョウの口にムリヤリ器具を突っ込み、そこから消化しやすい餌を大量に詰め込む。さらに、太らせるためになるべく運動ができないよう、狭い檻の中で飼育を続ける。これを繰り返しているうちに、おいしいフォアグラが完成する。


 動物虐待の定義はいろいろあって難しい。さらに、食用として飼育するガチョウはペットというよりは家畜(厳密には鳥類なので家禽)であり、最後には屠殺するのだから、尚更難しい。ただ、ガチョウに苦しい思いをさせるのは違う、とフォアグラを食材に使わない航空会社も出てきている。一方で、フランスの伝統的食文化だと言われれば、それを否定することもできない。食文化と動物保護の問題はなかなかに難しい。


 僕達は日々、様々な食物を食べて生きている。それらがどうやって食卓に上るのか…これは一度考えてみるべきテーマなのではないだろうか?フォアグラがおいしいのが最大の悩みなんだけど(僕はあまり好きじゃないけど)。