1MA 10/5(月)予定 1MB 10/7(水)予定
授業の目標
①体内環境の定義を説明できる。
②3種類の体液の相互関係を説明できる。
重要な語句(P.はベストフィット生物基礎)
組織液(P.123)
…体液のうち、組織の(細胞間)を満たすもの。毛細血管からしみ出した(血しょう)に由来する。
周辺の細胞に必要な成分を供給する。
リンパ液(P.128)
…体液のうち、(リンパ管)内を流れるもの。(組織液)の一部がリンパ管に入り、リンパ液となる。
授業の内容
◎世界最大の魚類であるジンベエザメの周囲には水(海水)がある。
…水には、
①乾燥を防ぐ
②温度を一定の範囲に保ちやすい
といった利点がある。
◎生物の体内の細胞も水(体液)で囲まれている。
※ここでいう「体内」とは「体腔」(内臓が収まっている場所)を指す。
…体液は、
①細胞に物質を供給する
②細胞から老廃物を受け取る
③細胞に化学物質を用いて情報を伝達する
といった働きがある。
…体液は3種類に分類される。
①血液……血管内を流れる。物質の運搬に働く。
↓ 毛細血管から血しょう(血液の液体成分)だけが毛細血管外へ出る
②組織液…組織の細胞間を満たす。細胞に物質を供給する。
↓ 組織液がリンパ管内に入っていく
③リンパ液…リンパ管内を流れる。
↓ リンパ管は鎖骨下静脈と合流し、リンパ液が血管内に入る
◎体液の働きによって、動物の体内は一定の範囲内に保たれる。
=恒常性(ホメオスタシス)
Back Side Story Vol.18
高校時代に見た液浸標本の思い出を語る
生物の標本、という言葉を聴くと何を思い浮かべるだろうか?多くの人が剥製(動物の表皮を剥がして、内臓の代わりに何かを詰めて、生きていた頃と同じような状態にした標本)や昆虫標本をイメージするのではないだろうか?ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」という作品には友人が持っていたチョウ(日本でいうところのガに相当するのだけれど)の標本を壊してしまう場面が登場する。動物であれ、植物であれ、生物を保存するために様々な処理を加えたりして標本はつくられる。
ところが、こうした標本づくりはかなり面倒くさい。以前、ネズミの剥製をつくろうとしたことがあったが、家庭科の成績が悪かった僕に、毛皮を剥がし、それを縫い合わせるという技術はさすがになかった(ちなみに、ネズミの毛皮を剥がすだけならそこそこ簡単にできる。ちょっとグロテスクだけど…)。そこで登場するのが、液浸標本である。文字通り、液体に生物を浸して保存する方法だ。主にはホルマリンやアルコールが用いられる。
大学1年生の時、乗鞍岳で2泊3日の実習があった。5月下旬のまだ寒い時期に川に入って、水生昆虫を採集するという地獄のような実習の際に、僕達に渡されたのはスクリュー管という小さな瓶にアルコールが入ったものだった。採集したカワゲラなどをひたすら瓶に詰めていく。あまりこの手の昆虫が得意でない僕はビクビクしながら、瓶詰めしていった。多少、色素が落ちたりするものの、外観はきれいに保たれる。僕が3年半前に大町から松本へ引っ越す際、準備をしている時にこの時の標本が出てきたが、何の問題もなかった。気味悪かったので、中身は三角コーナーに即捨てたけれど(笑)。
残念ながら、長らく生物の授業が行われてこなかった松工にはないが、いろんな高校に様々な液浸標本がある。僕の前任校である大町北高校にはカエルや魚の液浸標本があった。東京大学には、夏目漱石の脳の標本も保管されているらしい。彼の死後、遺体が解剖された後で摘出されたようだ。一般公開はしていないようなので、見ることはできないが…。
僕の母校にも多くの標本があった。学校の片隅にある標本室に、3年の時に生物の先生が連れて行ってくれたことは今でも覚えている。いろいろな動物の剥製が所狭しと並んでいる。覚えているのはトキとシマウマがいたことだ。さらに、奥の方には液浸標本が並んでいた。へえ、と思いながら見ているうちに10個の瓶が並んだ棚が目に止まった。…僕達の目はそこに釘付けになった。
そこにあったのはヒトの胎児の標本だった。妊娠1ヵ月目から10ヵ月まで、1ヵ月ごとの胎児の成長が分かるような標本がそこにはあった。もちろん、現在はそんな標本をつくることはできない。どのような経過でこの世に生を受けようとしながら、受けられなかった胎児達が瓶の中で永遠に眠ることになったかは、先生も分からないと言っていた。シマウマを見ている時にははしゃいでいた僕達も、その標本群の前では神妙な面持ちになったことを覚えている。残念ながら、4年前に母校の標本館は解体されたらしい。あの胎児達は今どこにいるのか…。