01 多様な生物を分類する


1MA 4/ 1MB 4/9(木)


授業の目標

生物の分類例として五界説の分類基準を説明できる。


重要な語句

分類(P.126)

…同じような(特徴)を持つ生物をまとめて(グループ)化すること。

(P.120)

…生物の分類における最も基本的な単位。同種の(個体)間でのみ(子孫)を残せる。


授業の内容

◎地球上には多様な生物がいる。生物学においては、動物も、植物も生物である。


◎ヒトは生物を分類し、名前をつけた。

→分類の基準は目的や時代によって異なる。

|目的でみると…|

1 食べられる植物と、食べられない植物

2 飼える動物と、飼えない動物

|時代でみると…|

1 動物と植物の2つに分類

2 顕微鏡の発展とともに原生生物を加える

3 植物と菌類を明確に分類

4 5つの界(kingdom)に分類 …後述

5 3つのドメインに分類 …最新の研究


◎分類の一番基本的な単位がである。

→種ごとに名前をつける

学名…世界共通の名称。属名+種小名(リンネがつくる。これを二名法という)からなり、ラテン語(もしくはラテン語っぽい単語)で書かれる。

例)トキ  Nipponia nippon

  ツバキ Camellia japonica

和名…日本国内共通の名称。カタカナで書かれる。

 

◎分類の基準は変化してきた。昔は形態や生殖などの特徴で区別してきたが、現在ではDNAの塩基配列を中心にした分類基準ができつつある。

 

◎分類の一例として五界説を挙げる。これは、生物を5つのグループ(=)に分類するものである。

動物  …主に摂食により栄養を取る多細胞生物

例)イヌ、ライオン、マグロ…

植物  …光合成を行う多細胞生物

例)セイヨウタンポポ、ソメイヨシノ

菌類  …からだの表面から栄養をとる生物

例)ベニテングダケ、アオカビ

※菌類には単細胞生物と多細胞生物がいる。

原生生物…①、②、③、⑤以外の生物

例)ボルボックス、ゾウリムシ

原核生物…原核細胞でできている生物

例)大腸菌、イシクラゲ

※ベストフィット生物基礎には原核生物の例として細菌類が挙げられている。イシクラゲなどのラン藻類はシアノバクテリアとも呼ばれ、細菌の一種として扱われる。


Back Side Story Vol.01

正しい分類とは何か、考えてみた。

 僕は大学で生物学を専攻していた。生物学といってもジャンルは様々だ。バイオテクノロジーのような電子顕微鏡レベルの分子生物学から、地球環境規模で考える生態学・環境生物学まで、あらゆる角度・あらゆるレベルで、科学者達は生物について考え続けている。ちなみに、僕の専門は生態学という、生物と環境の関係性・生物同士の関係性についての分野だった。


 大学4年生の時、ある大学院生の研究発表を聞く機会があった。彼が研究していたのは、東南アジアの植物だった。話を聞いていくと、どうやら新種の植物を発見したらしい(らしいというのは、眠くて記憶が曖昧だから)。「新種を発見した」というのは僕にとってはすごいことだったが、一緒に話を聞いていた別の大学院生はこうつぶやいた。「それで博士論文が通るんだ。へぇー」どうやら、彼の中では、そんなにたいしたことではなかったらしい。


 地球上にどれだけの生物が生息しているか、ということは教科書にも載っている通り、よく分からない。僕達がまだ発見していない種もいるだろうし、発見はしていても、種として区別できていない可能性もある。だから、今でも「新種発見!」というのは新聞などででかでかと報道されることがある。かつて週刊少年サンデーで連載されていた「め組の大吾」(曽田正人・小学館)では、主人公・大吾の憧れの人である落合先生が、スマトラ島で新種のコガネムシを発見する場面が描かれる。おそらく、これから先も僕達は多くの新種発見ニュースを目にすることだろう。


 新種と認定されるためには、まずその生物の形質の特徴を明確にし、言葉と図で表現することが求められる。その後、その形質と既知の種を比較して、どの分類群に属するべきかを検討する。さらに、分類群内での位置付けをして、最後に学名(ラテン語で表記された「属名種小名」で構成された世界共通の名称)をつけることになる。この中で、大変なのは既知の種との比較だ。DNAの解析技術が進んだ現代では、単に形態が似ているだけでは同じ分類群に入れて良い、ということにはなかなかならない。例えば、哺乳類でみてみると、クジラは意外にウシあたりと近い関係にあることがDNAの解析から分かってきている。もはや分類学はDNA解析なしに進めることができないのだ。


 その一方で、DNAを重視していくと、授業で紹介した五界説は実情に合っていない、というのが、最近の研究結果だ。果たして僕達は何を基準にすべきなのか。そもそも正しい分類は存在するのか、はたまた必要ないのか?


参考資料

Web 東邦大学生物多様性学習プログラム「生物の分類体系」

「大哺乳類展ー陸のなかまたち」(朝日新聞社)